【日記】はじめての桜桃忌。


6月19日、近所にある禅林寺へお墓参りにいってきました。
太宰治の誕生日であり、玉川上水への入水自殺をした後、遺体が発見された日でもある19日は「桜桃忌」と呼ばれて、墓がある禅林寺には毎年太宰の愛好家たちがたくさんお墓参りに訪れるのですが、僕もまた例外ではなく足を運んだ一人なのでした。去年も行こうと思っていたのですがタイミングが合わず、この日は和歌山にいたので今回が初めてです。

太宰は若いころにハマる人が多いと聞くので(僕は23のころ読んだ人間失格が最初でしたが)、さぞ世を憂えた若者たちがあつまっているのかなと思いきや、圧倒的にご年配の方が多かったです。連載当時タイムリーに読まれていた人たちなのかもしれません。
それにしてもこの報道陣の多さは想像以上でした。伸びるマイクにフラッシュの雨。すごく、手があわせづらい雰囲気です・・・。
今年は生誕100周年ということもあって、例年より注目度が高かったのでしょう。三鷹市も太宰を盛り上げようと必死なようで、観光協会が「桜桃忌ガイドツアー」なるものを企画されてました。僕が着いたのが1時40分ごろで、2時ごろからツアーが無料で開始されると聞いて迷いましたが、係りの方に詳細を伺うと、旧太宰邸跡から始まり玉川上水入水場所遺体発見場所、それに一緒に心中した山崎富栄の下宿跡などを徒歩1時間かけてめぐるツアーだそうす。この日は炎天下だったこともありやめにしました。たしかに太宰ゆかりの地ですが、こうも縁起のよろしくない場所に汗ながしながらぞろぞろと徒歩めぐりするにはちょっと気がひけました。しかも近所だし。

たぶん三鷹だけじゃないと思うのですが、本屋さんもすごいことになっています。太宰生誕100周年コーナーが作られていて、傑作集や語録集、別冊宝島など太宰関連本の新刊がずらり。手にとってパラパラと見ますと、ファンを長くしてるとまあ大体知ってる情報がほとんどなのですが、自称太宰ファンの著名人たちのコラムが載ってました。斜め読みするとこれがもう、なんというか、恥ずかしい。太宰に宛てた手紙形式書かれたものが多く、もう、ほんっとうに太宰好きなんだなぁアナタ、と言いたくなる文章のオンパレード。「私は貴方の妻として生きているつもりです」なんていうコラムもあり、呼んでて赤面する始末でした。熱狂的に好きなのは、そりゃあ気持ちもわかるけど、ここまで来ると拒否反応が出てしまいます。実はこの本にかぎらず、ネットでも太宰ファンのコメントを読むとこういう感じのモノが少なくなくて、同じ思いをしたことを思い出しました。

かく言う僕も太宰が好きで三鷹に住んでるような男なのでヒトの事いえませんが、僕が太宰治を好きなのは「面白い作品を書いたから」です。今読んでも笑える作品も多いですし、考えさせられたり共感したり、非常に楽しませてもらっています。特に執筆から60年以上たって、そのユーモアが笑えるっていうのは純粋にスゴイと思います。逆に60年先の人を笑わせる文章って、いまどれだけの人が書けるでしょうか。
未読の方は暗い作品ばかり書くというイメージをお持ちかもしれませんが、全然そんなことはないのです。「黄村先生言行録」、「花吹雪」、「畜犬談」などなど、実に面白いのです。自分の弱さや苦悩を描く自虐的な作品が多いですが、僕のような厭世主義的な人間にはこの普遍的苦悩がまさにツボで、心から共感できて楽しいのです。

が、あくまで「面白い作品を書いたから好き」なのであって、彼の人間性を全肯定しているわけではありません。彼の軌跡をたどれば、軽蔑に値する点も少なくなく、だからアンチ太宰の気持ちもわかるのです。悲観主義に嫌悪感を持つ楽天主義者ならなおのことそうでしょうし、社会倫理や社会道徳に重きを置いている方なども同じ思いでしょう。
熱狂的になにかを好きになるのはとても素敵なことですが、時にそれらの反倫理的な側面をも全肯定してしまうのはどうかなぁ・・・と思うのです。「信者」になると「盲目的」になりがちなので、その行動が、他者からみて異常に見えたりするのでしょう。当の本人は気持ちよいのでしょうけれど。

はじめての桜桃忌。多くの人の列を並んで墓参りした際、墓石に抱きつく中年女性や、なにやら芝居がかった行動を取る若者をみて、そんなことをふと考えたのでした。で、来た僕の順。少し墓石から距離を置いて軽く手を合わし、思う言葉は以前と同じ。

「いつも楽しく読んでいます」

どうせ直らない厭世主義なら、いっそそれを楽しみたい。彼のような作家がいて、本当にうれしく思います。

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榎本よしたか

Author:榎本よしたか
フリーランスのイラストレーター兼法廷画家です。書籍やテレビ番組用に絵を描いています。アコースティックギターと歴史雑学が好きです。

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